子ひげ商店 -顔なじみの店主がつなぐ川内村のあたたかな日常-

子ひげ商店 -顔なじみの店主がつなぐ川内村のあたたかな日常-

「商店」は暮らしの一部 

川内村に暮らす人々にとって、「子ひげ商店」はただの商店ではありません。村民ひとりひとりに寄り添った商店です。そこには、日々の暮らしを支える品々と、店主の変わらぬ笑顔がありました。

naturadistill川内村蒸留所がある町分通りを田村市方面へ歩くこと約5分、一軒の商店が見えてきます。
子ひげ商店・店主の宍戸光二(ししど みつじ)さん(65)は、24歳で家業を継いでから40 年あまり。

もともとは鮮魚を取り扱うお店でしたが、震災後からは食品を中心に生活用品などを販売。親子代々受け継がれてきた店は、時代と共に、お店の在り方や売るものを変えながら村の日常に溶け込み、人々の暮らしを支え続けています。お店に足を踏み入れると、光二さんだけでなく、お母さまも優しい笑顔で温かく迎えてくれます。



「ちょっと足りない」を支えるお店

「大きなスーパーで買い忘れたものが揃う店」。光二さん自身がそう語るように、何か足りなくなった時にふらっと立ち寄れば、必要なものが見つかります。
川内村にはスーパーがなく、一番近い隣町の店舗までは車で約30分。買い忘れたものがあった時や、車の運転が難しい高齢者の方々にとって、子ひげ商店は気軽に来れて、助かるお店です。


お菓子や飲み物も揃っており、「ちょっと甘いものがほしいな」と思った時にもぴったり。コンビニのような便利さを持ちつつ、どこか温かみがあるのが、「子ひげ商店」の魅力です。


買い物の先にある「人の暮らし」 


仕入れをする時も、光二さんはお客さんの顔を思い浮かべながら、「あの人はこれを使 うかな」「この季節ならあの家でこれが必要だろう」と考えているそうです。

また、1 日の終わりに今日は何が売れたかを見て、「ああ、今日はあの家の誰かが来た んだな」と分かることもあるそうです。お客さんの多くも、「ここに行けば欲しいもの があるから」と信頼してお店に訪れるのだとか。品物の先に、村の人の暮らしが見え る。そしてそれに寄り添う。それが、子ひげ商店の日常です。

川内村ならではの温かさ

光二さんによると、川内村の人々は、「困った人を放っておけない」という気質を持っ ているそうです。村にやってきた若い人には、お米や野菜をお裾分けするのが当たり 前。お互いに声をかけ合い、「ちゃんと食べてるか?」「お米は足りてるか?」と気に かけることが、日常の一部になっています。

それは光二さんも同様で、インタビューの中でも「ご飯には人を優しく元気にする力 がある」とおっしゃっていました。人と人を繋ぎ、お腹を満たし、心をほっとさせて くれる。食べることの大切さを、村の日常が教えてくれるような気がします。

人々の成長を見守ってきた子ひげ魚店 


この商店には、子どもの頃から光二さんを知る住民や、かつて親に連れられてきた子 が、自分の子どもを連れて訪れることもあります。住民が世代を越えてつながる場と して、商店から確かな存在感を感じます。

一方で、店の外を歩いている子どもを見て、昔は誰の子どもかすぐにわかったけれ ど、今はあまりわからなくなったと、少し寂しそうに笑う光二さん。その姿には、長 年この地で営んできた商店主としての思いがにじみます。

昔から続く小さな商店のぬくもりや、店主・光二さんのお客さんを思う心が映る「子 ひげ商店」。今回、シャイなご主人は写真を撮られるのを恥ずかしがり、残せませんで したが、ぜひ足を運んで直接会いに行ってみてください。

 

■子ひげ商店
福島県双葉郡川内村上川内沢
営業時間 不定休
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